漫画「ルサンチマン」ネタバレ感想!2015年を舞台にしたSFファンタジー漫画

ルサンチマン(1)

十数年前の作品になるが、作者のデビュー作にあたり、2006年のセンス・オブ・ジェンダー賞話題賞なるものを受賞している。

調べるとこの作者、デビュー当時既に30歳である。専門学校でプログラムを学んだり、サラリーマンをしていた経験があるらしい。異色とは言わないまでも、今の日本の漫画家の中では若干毛色の変わった部類といえる。

ルサンチマン(1)
作品名:ルサンチマン(1)
作者・著者:花沢健吾
出版社:小学館
ジャンル:青年マンガ

漫画「ルサンチマン」1巻のあらすじ

ルサンチマン(1)

舞台は2015年の日本。うっかり「現在」かと思いそうになるが、描かれた当時を基準にすれば、だいたい十年くらい先の未来として想定されている。つまり、SFである。

この世界は、全体的には現実の世界と大差はないが、一部に、大きな発展を遂げている分野がある。VR、ヴァーチャル・リアリティ(と、ついでに言えばAI)である。

いわゆる装着型のデバイスを身に付けることで、架空の世界に入り込むことができ、その場では五感も再現される。触覚もである。そして、仮想現実(アンリアル)と呼ばれる世界に、人間そっくりの、この作品の世界ではNPCと呼ばれる、仮想の人工知性体が存在する。

物語の紹介へと移ろう。

主人公・坂本拓郎は、さえない素人童貞の、頭のハゲかかったブルーカラーの30男である。30歳の誕生日に、友人から「アンリアル」について教えられ、もう現実世界の恋愛には縁がないものと割り切り、ほぼ全財産、大枚57万8000円をつぎ込んで、VRの装置やらAIソフトやら一式を買い込んでくる。VRの「恋人」を作らんがためである。

ちなみに、疑似的な性行為を可能とする装置も別売りで存在するのだが、それは買えていない。さらにもう58万円する。拓郎は実家住まいで生活費には余裕がありそうであり、また一応働いているのだからローンくらい組めそうなものではあるが、そのへんは掘り下げられない。金貯めて買おう、などと考えている。

漫画「ルサンチマン」1巻のネタバレ

さて、買ってきたAIの「NPC」は、「月子」と名乗る可愛らしい少女であった。ところが、この月子、何か様子がおかしい。端的に言うと、自我を持っているようなのである。NPCというのは普通、所有者に都合よく振る舞う、実質的にはセクサロイドのようなものであるはずなのだが、月子は「自分には好きな相手がいる」などと言い出す。しかし、どうも記憶があいまいで、それが誰なのか本人もよく分かっていない。

しかも、月子に強引に迫ろうとして噛みつかれた拓郎は、その傷が現実世界でも生じていることに気付く。アンリアルを紹介してくれた友人、越後と相談した結果として判明するのだが、本来、そんなことは起こらないはずであるらしいのだ。

ちなみに、この「アンリアル」は、あらゆるゲームが一つの仮想現実世界の上に立ち上げられた、巨大なMMO、コンピュータ・ネットワーク・システムとなっている。女性AIを愛玩するというのは、この「アンリアル」全体でいえば、部分的な機能に位置付けられるようだ。まあ、レンタルビデオ屋の中にAVコーナーがある、という程度の比重で。

さて、月子の異常性はもう一つある。彼女は、現実世界を「観る」ことができるのである。VRのこちら側、拓郎の素顔(ゲーム内ではアバターが使用可能で、拓郎は若い頃の自分の顔を使っている)や、その住んでいる家の光景などをだ。

これも、越後の説明によれば、「人間があの世を垣間見る」くらいにあり得ないはずのことであるらしい。あまりに異常続きなので、越後の紹介で、月子を「ドクター」に見せることになる。ドクターといっても電脳世界の医者なので、ハッカーだ。

だが、たいしたことは分からない。月子が処女であるという事実と、「プロテクトがかかっている」ということが判明した程度である。

その後、月子はドクターと会った街で、チンピラから助けてくれた青年(人なのかNPCなのかは1巻時点では不明)のことが気になるからもう一度あそこに行きたい、と言い出し、拓郎は一人、それを送り出すことになる。

漫画「ルサンチマン」1巻の感想

ルサンチマン(1)

最初に率直なことを申し上げておくが、絵が濃い。そして、汚いおっさん(といっても30歳なのだが、現実世界の拓郎はまったく30歳には見えない。どう見てももっと年の行った中年男の外見をしている)をはっきりと汚く描くので、こういうのが苦手な人にはまずもうこの時点でダメであろう。

だが、物語は意外と、と言っては失礼かもしれないが、執筆当時新人であった、ということを踏まえなくても、なかなか話運びが上手い。先が気になるのである(筆者はこれを書いている時点で実際にまだ1巻しか読んでいない)。

1巻だけ読んだ時点では、とにかく謎だらけだ。「ムーン」という「伝説のソフト」が、月子と何か関わりがあるらしいが、それも名前くらいしか分からない。とまれ、続きを読んでこの先もご紹介していくとしよう。

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