漫画でわかる簡単な法律学!マキヒロチ「夫の遺言」あらすじ・ネタバレ感想

夫の遺言
夫の遺言
作品名:夫の遺言
作者・著者:マキヒロチ
出版社:集英社
ジャンル:青年マンガ

マキヒロチの漫画「夫の遺言」あらすじ

29歳年上の夫。結婚生活1年半、夫が死んで妻が一人残され、しかし遺言状に自分の名は無く……というところから始まる話である。

29歳年上の夫(職業は作家)は、それなりに売れっ子だったようで、妻(ちなみに最初の妻ではない。後妻であるらしい)、60歳で亡くなった後、いろいろなものが残された。前妻との間の子、非婚の恋人との間の子、愛人、などなどである。

そうした人々の間の、葛藤や相克が……うーん。あまり描かれていないような気がする。

マキヒロチの漫画「夫の遺言」ネタバレ&感想

主人公・絹代は、どうも亡夫から何も知らされていなかったらしい。周囲からは「最初から遺産目当てで老人に近づいて結婚した」と思われているのだが、本人は純心な恋愛結婚をしたつもりだったのである。

まあそれはそれでよい。とにかく、なんであれ子供が数人いたりするので、財産分与には専門的な知見が必要になる。この作品は、「弁護士ドットコム」なるものの監修だそうである。そこで、説明が(漫画部分とはページを分けて、文章で)掲載されている。

なぜ遺言に絹代の名は無かったか。割と簡単である。結婚するより前に遺言状を作って、それ以降更新していなかったからだ。法律上、最後の日付の遺言状のみが有効となるので、当然のことである。

とはいえ、自身の名が遺言状になくても、正式な法律上の配偶者であるから、遺留分が認められる。遺留分は、最大で全遺産の2分の1。配偶者が認められる法定相続分も2分の1であるから、かけあわせたところの4分の1が妻の遺留分となる。

しかし、あまり作中で詳しく説明されないのでよく分からないのだが、どうもこの亡くなった夫氏、生前におかしな事業に手を出して失敗していて借金があり、それは当然遺産と相殺になるので、あまり遺産はもらえなかったらしい。

で、主人公は就職活動をする。あんまり生活力のない主人公の、しかし生きるための奮闘が……描かれるのかと思えばそれもあんまり描かれてはいない。なんとなく、亡くなった夫の人脈に頼って何とかなった、という感じである。

そんなこんなで、人の紹介で仕事をしていたら、闇金の督促が仕事先(ちなみに水商売)に押しかけてきて、亡くなった夫には借金があったから返済を……という話になる。

すわ、闇金の恐ろしい取り立てとの過酷な争いが!となるかと思えばこれもあんまりならない。たまたま居合わせた客の中に弁護士がいて、「これ過払いですからもう返済の必要はありませんよ」と言って、あっけなく借金取りを撃退してしまう。

で、話は数年後(三回忌)に飛ぶ。どうも絹代はその弁護士のもとで働くことにしたらしい。亡夫の前妻、実子、愛人の皆さんなどとも、なんとなくそれなりにうまくやっている絹代である。

たいした盛り上がりもなにもなく、「夫の残してくれた遺言の本当の意味が自分には分かった」というようなことを絹代が述懐して、話は終わりである。

筆者が思うにこの本は、ヒューマン・ドラマなどを主題に掲げたものではない。有体に言ってしまえば、実用書なのだと思う。夫に急に先立たれたときの心得もちゃんと書いてあるし、そもそもの問題として、夫たる身で、残されることになる立場の相手がいるのであれば、ちゃんと生きているうちに身辺整理(最近は終活などと呼ぶ)をしておいた方がいい、というようなことも語られる。

もっとも、出てくる法律知識は、さほど専門的なものではない。法律学に詳しいわけでもない筆者でも知っているようなレベルの、一般教養レベルのものである。そういうものの分かりやすい概説書としては、まあお勧めと言えるかもしれない。

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