- 作品名:ハチミツとクローバー(3)
- 作者・著者:羽海野チカ
- 出版社:白泉社
- ジャンル:少女マンガ
ハチミツとクローバー 第3巻のあらすじ
3巻である。はぐと森田の関係はこの巻で大きく進展し、そして、大きな停滞を迎える。
花本先生はおおむね単行本丸1巻分程度の期間の出張を終え、モンゴルから帰ってくる。
山田の片思いはひたすら延々と空転している。
竹本の片思いもおおむね延々と空転している。
そんな感じである。
ハチミツとクローバー 第3巻のネタバレ&感想
前巻ではあまり言及しなかったが、花本先生のモンゴル行きは、はぐの精神的成長を示す重要な舞台装置である。花本先生はもともと、はぐをモンゴルに連れて行くつもりだった。
二人は家族同然の間柄である。はぐにとって花本先生(はぐは、修ちゃん、と呼ぶ)は、親代わりであり、また、兄代わりでもある存在だ。
逆に言うと、はぐの世界には、絵を描くことと、修ちゃんしか存在しなかった。それほど、危うい、脆い少女だったのである。
花本先生はそれをよく知っていたので、自分がいない状態ではぐを長期間日本に置いていくことが不安だったのだ。そこで、モンゴルに連れていこうとしたのだが、はぐはこう言った。
「修ちゃん、一人で行っておいでよ はぐには ともだちがいるから」
1巻1話の時点のはぐには絶対に言えなかった台詞だ。山田との女の友情があり、森田との芽生えたばかりの恋の関係があり、はぐは大きく成長している。
さて成長したはぐであるが、森田が芸術制作に打ち込んでいるところをじっと眺めている、というシーンがちょくちょく描かれるようになる。それを脇から複雑な思いで見つめているのが竹本である。
この巻で、「小鳥のブローチがほしい」と手帳に書いていたのを、はぐは森田に見られる。森田は、(彫刻ができるので)ブローチを自作し、「自分からのプレゼント」ということを明かさずに、はぐに贈る。
竹本は誰からのプレゼントか、すぐ理解する。はぐも、薄々は理解する。
あるとき、竹本は、「そのブローチだけど、多分……(森田さんが作ったんだと思う)」と、はぐに伝えようとする。しかし、その場にいた森田が、それを遮る。「ヨークシャーチーーズ!こないだヨークシャーテリアとマルチーズのハーフの犬を見つけた!」などと、わけのわからないことを抜かして。
そして次のシーンで、その場はクリスマス会なので「ケーキ食おうぜ」と竹本に言うのだが、その時、珍しくシリアスな
それからまたしばらくした、春の日。
桜の木の下で。
森田は、はぐとキスを交わした。いや、一方的にチューを奪ったというほうが正しいが。
で、そして二人は恋人同士に……となるのかと思えば、これが全然ならない。森田は、やらかしてから、自分のやらかしたことにパニックに陥り、「わー!」とか叫びながらその場を逃げ出す。
はぐはといえば、その場に卒倒し、そのまま高熱を出して寝込む。
しようのない二人である。はぐは当然としても、おそらく森田もファーストキスだったであろうと思われる。
もともと二人とも、恋愛とはあまり縁のない世界の住人なのだ。おっそろしく、不器用なのである。
とはいえさすがにここまで関係が進展したので、友達グループメンバー全員が、二人の関係を理解するようになる。仲良しメンバーの中で一組、カップルが誕生しても、別に不思議なことはない。
だが、そうはならない。
物凄く単純にいうと、森田もはぐも、両者とも、生きるエネルギーの99%以上を芸術に注いでいる人間であり、恋愛に振り分けるキャパシティが非常に乏しいからだ。
森田は、この巻の終わりで、大きな仕事が入り、なんといい感じになっていたはぐを置き去りにして、渡米してしまう。
竹本は、「なんなんだお前はー!」と絶叫する。見送りの空港で。
そんなこんなで、次巻に続く。