はぐが事故で大怪我…芸術家生命はどうなる!?「ハチミツとクローバー」第9巻のあらすじ・ネタバレ感想

ハチミツとクローバー(9)
ハチミツとクローバー(9)
作品名:ハチミツとクローバー(9)
作者・著者:羽海野チカ
出版社:白泉社
ジャンル:少女マンガ

ハチミツとクローバー 第9巻のあらすじ

ハチミツとクローバー、全10巻のうちの9巻。物語はこの巻を境に大きく動き、そしてクライマックスまで止まることがない。ちなみにギャグパートは激減する。少しさみしい。

冒頭、まずは森田の過去から始まる。回想シーンだ。森田とその兄、カオルが、派手な暮らしをしているわけでもないのに何をがむしゃらになって金を集めていたのか。それが明らかになる。

そしてこの巻の中盤。

終わりの始まりの幕が上がる。すなわち、最終章突入である。

はぐが、事故に遭って大怪我をする。芸術家にとって生命線と言うべき、利き手の自由を奪われるほどの大怪我を。

ハチミツとクローバー(8)

ハチミツとクローバー 第9巻のネタバレ

まずは、森田の過去の話からいこう。森田の父は、天才的な技術者で、会社経営者だった。だが、アメリカの強欲な資本家に、会社を乗っ取られてしまう。

ちなみに、会社乗っ取りに関与したのは、社の幹部だった森田父の幼馴染である。森田父は言う。

「俺は絶対に許さない。お前を、絶対に許さない……だから。カオル。忍。お前たちは、恨むな。この恨みを引きずるな。恨みは、オレが一代で終わりにする」

この後、森田父がどうなったのかは、不明であるが、行間を読む限り、故人のようである。

しかし、森田の兄カオルは、自分の父の仇とも言うべき相手を、許すことができなかった。自らの会社を興し、大金を稼ぎ、その仇である人物に復讐をすることを、ずっと狙っていた。

忍は、心中では、必ずしも賛成はしていなかったようであるが、実質的には、兄に全面的に協力していた。あの道化者の、お調子ものの、そして心優しい「森田さん」の正体は、復讐の鬼だったのである。

森田が、ピーター・ルーカスという映画監督とコネクションを作り、彼のもとで働いていたことも、重要な伏線であった。森田父が乗っ取られた会社の、株式の35%は、「ルーカス・デジタルアーツ」(詳細は不明だが、名前からして、ルーカス監督の会社なのであろう)が所持していたからだ。

森田兄弟は、この35%をルーカス監督から託され、残り16%もどうにかしてかき集め、会社の再乗っ取りに成功する。父を追放した仇敵を追い出し、父の会社を奪い返したのだ。

ちなみに、この資本家とルーカス監督、どうも知り合いであるらしいが、ルーカス監督は、完全に森田兄弟とグルになって、資本家を陥れにかかっている。「これから着る物も困るだろうから これあげる」と言って自分の顔がデカデカとプリントされたTシャツを送りつける、という、悪意があるとしか思えない態度である。

顔だけ見ればおもろいおっさんでしかないのだが、まあ大物映画監督だなんて種類の人間が、並大抵の人物であるはずもないのであり。

さて。その話と前後して、前述のようにはぐが大怪我をする。まず、神経を繋ぐ手術が必要だった。神経が無事に繋がったかどうかは、手術後少々の時間を置いて、手の痛みを感じることができるようになったか、で分かる。痛みより何より、はぐは自分が利き手の自由を失うこと、つまり芸術家として絶命することを恐れた。

はぐは、痛みに耐えながら、恐怖に耐えながら、自分の手にじっと意識を集中させ続ける。そして。

「痛いの来た わたしの手 ちゃんと繋がってる」

ハチミツとクローバー 第9巻の感想

ものすごく大上段からぶった切ると、森田さんというのは実は弱い人間である。自分の弱さを覆い隠すために、道化を演じているところがある。

そして、再びものすごく大上段からぶった切ると、はぐは強い人間である。基本的に、描き続けることさえできれば、それで生きていられる。寂しがり屋の森田とは違って、他者との関わりさえ、実は最低限しか必要としていない。恋人、という存在、伴侶、という存在、精神的にはまったく必要としていない。

その二人の差異が、明瞭に浮かび上がるのがこの巻だ。

しかし、はぐにも一つだけ弱点がある。

芸術家としてあまりにも完成された魂の持ち主であるために、描くことができなくなったら、彼女の魂は自らを支えることすらできなくなるのだ。

「ねえ修ちゃん 生きるってなに 息してごはん食べて あとは何すればいいの わからないよっ」

「描かないでなんて そんなの どうやって? 死ぬまでなんて そんな長い間 こわいよ」

そして、彼女の、芸術家としての全存在をかけた、文字通り、すべてを投じての、リハビリへの挑戦が始まる。

そして、最終巻へ。

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